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【第23回】地域クラブ活動の安全管理と保険|保護者が知るべき制度と確認ポイント

📖 この記事でわかること

  • ✓ 学校部活動と地域クラブ活動における安全管理体制の違い
  • ✓ 地域クラブ活動で適用される保険の種類と補償内容
  • ✓ 2026年12月25日施行の日本版DBSと指導者登録制度
  • ✓ 入会前に保護者が確認すべき5つの安全チェックポイント
「安全管理はどうなるの?」「事故が起きたら誰が責任を取るの?」「保険はちゃんとあるの?」——部活動の地域展開(学校から地域へ活動の場を移行すること)について、多くの保護者がこうした不安を抱えています。

結論から言えば、地域クラブ活動にも明確な安全管理基準が存在します。令和7年度(2025年度)の新ガイドラインでは従来以上に厳格な安全確保の仕組みが整備されました。本記事では、保護者として知っておくべき安全管理体制と保険の仕組み、そして入会前に確認すべきポイントを具体的に解説します。

学校部活動と地域クラブ活動で安全管理はどう変わる?

地域クラブ活動への移行で「安全管理が手薄になるのでは」と心配する声があるでしょう。しかし実際には、管理体制の「形」が変わるだけで、安全への配慮そのものが低下するわけではありません。まずは両者の違いを正しく理解しましょう。

責任の所在はどこにある?学校と地域クラブの管理体制の違い

学校部活動と地域クラブ活動では、責任の所在と法的根拠が異なります。

学校部活動では、学校設置者が責任主体となり、教員が監督を担当します。事故発生時の法的責任は、公立学校では国家賠償法が中心となり得る一方、私立学校では民法上の責任(使用者責任等)が基本となります。

一方、地域クラブ活動では運営団体が責任主体となり、地域指導者が監督を担います。運営主体が自治体直営か民間法人かによって法的構成は異なるため、入会前に運営規程・保険・事故時の窓口を確認することが大切です。

⚖️ 学校部活動と地域クラブ活動の管理体制比較
項目 🏫 学校部活動 🏃 地域クラブ活動
責任主体 学校設置者
(自治体/学校法人)
運営団体
(自治体/法人等)
監督者 教員
(部活動顧問)
地域指導者
法的根拠 公立:国家賠償法
私立:民法
運営主体により異なる
▲ 責任の所在が明確であることは、むしろ安心材料となります

この違いが「不安」の原因になりやすいのは事実でしょう。しかし、責任の所在が明確であることは、むしろ安心材料。認定地域クラブ活動では、運営体制・安全確保体制が認定要件に含まれており、基準を満たした団体のみが認定を受けられる仕組みが整っています。

認定地域クラブ活動に求められる安全基準とは?7つの認定要件を解説

令和7年度(2025年度)12月に策定された新ガイドラインでは、「認定地域クラブ活動」制度が創設されました。認定を受けるためには、7つの要件を満たす必要があります(出典:文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」令和7年12月)。

その中の「⑤適切な安全確保の体制が確保されていること」では、暑さ指数(WBGT)等への配慮、施設点検、緊急時対応の明確化、保険加入などが確認事項として示されています。

📋 認定地域クラブ活動の7つの要件
⑤の安全確保体制が特に重要です
適切な運営体制
適切な指導者配置
適切な活動内容
適切な活動環境
適切な安全確保の体制が確保されていること
暑さ指数(WBGT)等への配慮、施設点検、緊急時対応の明確化、保険加入など
適切な情報提供
適切な費用負担

具体的な取り組みとしては、以下のような内容が望ましい例として挙げられます(自治体の認定要綱やクラブ規程によって求められる内容は異なる場合があります)。

  • 事故防止のための安全管理マニュアルの整備
  • 緊急時の連絡体制・対応手順の明確化
  • AED設置場所の把握・救急救命講習受講者の配置
  • 熱中症対策、落雷対応などの具体的ガイドライン

認定を受けた地域クラブ活動は、公的支援や学校施設の優先利用が可能になるため、多くの地域クラブが認定取得を目指しています。保護者としては、「認定地域クラブ活動かどうか」を一つの判断基準にできることを覚えておきましょう。

【参考】自治体の先進的な取り組み例
一部の自治体では、認定地域クラブ活動の指導者全員にAED講習と救急救命研修の受講を義務付けたり、活動中の事故発生時に迅速に保護者へ連絡する体制を整備したりする例が見られます。このような透明性の高い運営は、保護者からの信頼獲得につながっています。お住まいの自治体の取り組みについては、教育委員会や担当窓口にお問い合わせください。

地域クラブ活動ではどんな保険が適用される?補償内容と保険料を解説

学校部活動では災害共済給付制度が適用されますが、地域クラブ活動では異なる保険制度が適用されます。補償内容に大きな差があるわけではありませんが、仕組みの違いを理解しておくと安心です。

災害共済給付からスポーツ安全保険へ——何が変わる?

学校部活動では、日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度が適用されます。学校管理下での負傷・疾病に対応し、医療費の4割(自己負担3割+療養給付1割)が給付される仕組みです。

共済掛金は義務教育諸学校で年額920円(沖縄県は460円)。保護者負担は設置者が規程等で定め、4割から6割が目安となります(出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター「共済掛金の額」)。

一方、地域クラブ活動では、公益財団法人スポーツ安全協会が提供する「スポーツ安全保険」が一般的に利用されています。団体活動中の傷害・賠償責任をカバーする保険で、加入区分により掛金・補償内容が異なります(出典:公益財団法人スポーツ安全協会)。

🔄 学校と地域クラブで保険はこう変わる
これまで
🏫 学校部活動
災害共済給付制度
(日本スポーツ振興センター)
・学校管理下での負傷・疾病に対応
・医療費の4割が給付
・掛金:年額920円
(沖縄県は460円)
地域展開
これから
🏃 地域クラブ活動
スポーツ安全保険
(スポーツ安全協会)
・団体活動中の傷害・賠償責任をカバー
・加入区分により補償内容が異なる
・掛金:年額800円〜
(子ども A1区分の場合)
⚠️ 重要:学校管理下を離れた地域クラブ活動では災害共済給付制度の対象外となります

重要なポイントとして、学校管理下を離れた地域クラブ活動では、災害共済給付制度の対象外となります。そのため、地域クラブに参加する際は、必ず何らかの保険に加入しているかを確認することが大切です。

スポーツ安全保険の補償範囲と保険料はどのくらい?

スポーツ安全保険の補償内容を具体的に見てみましょう。以下は子ども(中学生以下)の一般的なスポーツ活動(A1区分)の例です。傷害保険では、活動中および往復中の事故による死亡・後遺障害・入院・通院が補償の対象。賠償責任保険では、他人にケガをさせた場合や物を壊した場合の損害がカバーされます。

💰 スポーツ安全保険の補償内容(A1区分・子ども)
年額800円で以下の補償が受けられます
補償項目 補償金額
死亡 3,000万円
後遺障害(最高) 4,500万円
入院(1日あたり) 4,000円
通院(1日あたり) 1,500円
賠償責任 合算1事故5億円
(対人は1人1億円)
▲ 出典:公益財団法人スポーツ安全協会「加入区分、掛金、補償額」令和7年度

子ども(中学生以下)のA1区分の場合、掛金は年額800円。地域クラブによっては会費に保険料が含まれている場合もありますので、入会時に「どの保険に加入しているか」「補償内容は十分か」を確認することをおすすめします。

※注意:スポーツ安全保険は令和8年度に掛金・補償内容の改定が予定されています。最新情報はスポーツ安全協会のウェブサイトでご確認ください。
【保護者の声】
中学2年生の子どもを地域バスケットボールクラブに通わせている保護者のAさんは、「入会前に保険の補償内容を詳しく説明してもらえたので安心しました。学校部活動より連絡体制がしっかりしていると感じます」と話しています。

地域クラブの指導者は信頼できる?日本版DBSと登録制度で安全性を確認

「どんな人が指導者になるのか」は保護者にとって大きな関心事でしょう。令和7年度(2025年度)の新ガイドラインでは、指導者の安全性を確認する新しい制度が明記されました。

日本版DBSとは?性犯罪歴確認で指導者の安全性を担保

日本版DBS(Disclosure and Barring Service)とは、子どもと接する職業・活動に従事する人の性犯罪歴を確認する制度です。イギリスで運用されている同名の制度をモデルに、日本でも「こども性暴力防止法」として令和6年(2024年)6月に成立しました(出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法について」)。

施行日は2026年12月25日が予定されています。「令和8年度」とだけ聞くと2026年4月からと誤解されがちですが、実際の施行は年末となる点にご注意ください。

📅 日本版DBS(こども性暴力防止法)の施行スケジュール
2024年6月
法律成立
現在
準備期間
2026年12月25日
施行予定
▲ 「令和8年度」は4月からではなく年末施行。誤解に注意!

この制度により、学習塾やスポーツクラブなどの民間教育事業者も「認定制度」への参加対象に。地域クラブ指導者もその対象に含まれており、新ガイドラインでは「日本版DBSの活用」が明記されました。

保護者にとっては、「指導者の安全性が制度的に担保される」という大きな安心材料となるでしょう。ただし、確認できるのは性犯罪歴(有罪判決を受けた前科)のみであり、不起訴となったケースは対象外となる点は理解しておく必要があります。

認定指導者の登録制度とは?保護者が確認できる仕組みを解説

新ガイドラインでは、「認定地域クラブ活動指導者」の登録制度も新設されました。

この制度の目的は、指導者の質の担保と追跡可能性(トレーサビリティ)の確保。登録要件には、市区町村等が定める研修の受講や、日本版DBSによる確認などが含まれます。

🔐 認定地域クラブ活動指導者の登録制度
🎯 制度の目的
指導者の質の担保と追跡可能性(トレーサビリティ)の確保
📚 登録要件①
市区町村等が定める研修の受講
🔍 登録要件②
日本版DBSによる確認
▲ 「登録された指導者がいるクラブ」を選ぶことが安全なクラブを見極める判断基準の一つになります

保護者が指導者の登録状況を確認できる仕組みについては、自治体の運用により異なります。「登録された指導者がいるクラブ」を選ぶことが安全なクラブを見極める一つの判断基準になりますが、確認方法は市区町村や運営団体に直接お問い合わせください。

【参考】自治体による指導者研修の例
一部の自治体では、地域クラブ指導者向けに独自の研修プログラムを実施しています。安全管理、ハラスメント防止、発達段階に応じた指導法などを学ぶ内容で、研修修了者を公開している自治体もあります。お住まいの自治体の取り組みについては、教育委員会等にお問い合わせください。

地域クラブで事故が起きたらどうなる?入会前に確認すべき5つのポイント

万が一の事故に備えて、地域クラブがどのような対応をとるのかを事前に把握しておくことが大切です。入会前に確認しておきたいポイントを具体的に整理しましょう。

万が一の事故発生時には何が起きる?対応フローを解説

地域クラブ活動で事故が発生した場合、一般的に以下の流れで対応が行われます。

🚨 事故発生時の対応フロー
STEP 1
応急処置
救急車要請
指導者が初期対応
STEP 2
保護者への
連絡
クラブから直接連絡
STEP 3
事故報告書
作成
状況を記録・保管
STEP 4
保険会社へ
連絡・手続き
給付申請を進める
💡 学校部活動との違い:学校を経由せず、クラブから直接保護者に連絡が入ります

学校部活動との大きな違いは、学校を経由せず、クラブから直接保護者に連絡が入るという点。そのため、保護者の緊急連絡先を正確に登録しておくことがとても重要になります。事故報告書の保管・共有についても、入会時に確認しておくと安心でしょう。

入会前に何を確認すべき?保護者のための5つの安全チェックリスト

保護者が入会前に確認すべき5つのポイントをまとめました。

✅ 入会前に確認すべき5つの安全チェックポイント
これらを確認することは保護者の当然の権利です
保険加入状況
どの保険に加入しているか、補償内容は十分かを確認しましょう。スポーツ安全保険など、団体として加入している保険の詳細を聞いておくことが大切です。
緊急連絡体制
事故発生時の連絡フローや、担当者の連絡先を把握しておきましょう。「誰に、どのように連絡が来るのか」を明確にしておくことで、万が一の際にも落ち着いて対応できます。
安全管理マニュアル
熱中症対策、落雷対応、AED設置場所など、具体的な安全管理の取り組みを確認しましょう。マニュアルが整備されているクラブは、安全意識が高いと言えるでしょう。
指導者の資格・登録状況
指導者資格の有無や、認定地域クラブ活動指導者への登録状況を確認しましょう。研修を受けた指導者がいるかどうかは、指導の質を判断する材料になります。
認定地域クラブ活動かどうか
市区町村等から認定を受けているか、または取得予定かを確認しましょう。認定クラブは、安全確保体制を含む7つの要件を満たしています。

これらを確認することは保護者の当然の権利です。遠慮なく質問してください。回答が曖昧なクラブは、再考の余地があるかもしれません。

【教員の声】
中学校で長年部活動顧問を務めてきたB教員は、「地域クラブへの移行で不安に思う保護者もいると思いますが、認定制度ができたことで安全基準が明確になりました。むしろ、専門的な指導者がいる地域クラブの方が安全管理が徹底されているケースもあります」と話しています。

✅ まとめ

  • 地域クラブ活動でも明確な安全管理基準があり、認定制度により体制が担保される
  • 保険は「スポーツ安全保険」が一般的で、子ども(A1区分)は年額800円で加入可能
  • 日本版DBS(こども性暴力防止法)は2026年12月25日施行予定
  • 入会前には「保険・緊急連絡体制・安全管理マニュアル・指導者資格・認定クラブか」の5点を確認
  • 安全面の確認は保護者の当然の権利であり、回答が明確なクラブを選ぶことが重要

地域クラブ活動への移行で安全管理体制が弱くなるわけではありません。むしろ、令和7年度(2025年度)の新ガイドラインでは「認定地域クラブ活動」制度や「日本版DBS」「認定指導者登録制度」など、従来以上に安全を確保するための仕組みが整備されました。これらの制度を理解し、入会前にしっかり確認することで、お子さんの安全を守ることができます。

📚 参考文献

文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)
スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月)」(報道発表)
公益財団法人スポーツ安全協会「加入区分、掛金、補償額」
独立行政法人日本スポーツ振興センター「共済掛金の額」
独立行政法人日本スポーツ振興センター「給付金(医療費)の計算方法」
こども家庭庁「こども性暴力防止法について」

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