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【第26回】地域クラブ活動の安全管理体制と保険補償――わが子を安心して送り出すために

📖 この記事でわかること

  • ✓ 学校部活動から地域クラブに変わっても安全管理が確保される仕組み
  • ✓ 災害共済給付制度とスポーツ安全保険の補償内容の違いと注意点
  • ✓ 認定地域クラブ活動に求められる安全確保体制の具体的な基準
  • ✓ 万が一の事故に備えて保護者が確認しておくべきチェックリスト
「部活動の地域展開が進む中、けがや事故のときの補償はどうなるの?」「安全管理は誰がしてくれるの?」――こうした不安の声は、多くの保護者に共通するものです。

この記事では、地域クラブ活動(学校部活動の教育的意義を継承しつつ、地域で行うスポーツ・文化芸術活動。休日から先行して進む自治体が多いが、取組範囲は地域の実情により異なる)における保険制度の違いから認定基準、保護者向けチェックリストまでを具体的に解説します。結論として、令和7年(2025年)12月策定の新ガイドラインにより安全確保の基準は制度的に整備されており、保護者が確認すべきポイントを押さえれば安心してお子さまを送り出すことができます。

ただし、制度が整備されていることと、実際の安全がクラブごとに確保されていることは別の話です。自治体の認定運用やクラブの実装(研修、マニュアル整備、保険加入の確認)が鍵になります。

新ガイドラインでは、「安全確保体制」が認定地域クラブの要件の1つに明記されました。保険制度の仕組みから具体的な確認方法まで、一緒に見ていきましょう。

学校部活動と地域クラブで安全管理はどう変わる?

部活動が地域クラブへ移行すると、安全管理の「担い手」と「法的枠組み」が変わります。ただし、すべてが一変するわけではありません。変わること・変わらないことの両面を整理しましょう。

学校部活動ではどんな安全管理体制があったの?

これまでの学校部活動では、3つの層で子どもの安全が守られてきました。

1つ目は、学校設置者(自治体)と学校の安全配慮義務です。学校保健安全法に基づき、校長や顧問教員には生徒の安全を確保する法的責任があります。

2つ目は、国家賠償法に基づく公的責任。公立学校の部活動中に事故が起きた場合、事故の態様によっては設置者(自治体)が損害賠償責任を負うことがあります。

3つ目は、災害共済給付制度による補償です。日本スポーツ振興センター(JSC)の公的共済が、学校管理下でのけがや事故をカバーしてきました。

この3つの層こそが、保護者にとっての「安全の土台」です。

🛡️ 学校部活動の安全管理「3つの層」
保護者にとっての「安全の土台」を構成する仕組み
1
安全配慮義務
学校保健安全法に基づく学校設置者・校長・顧問教員の法的責任
2
国家賠償法に基づく公的責任
公立学校の事故では、態様によっては設置者(自治体)が損害賠償責任を負う
3
災害共済給付制度(JSC)
学校管理下でのけが・事故をカバーする公的共済

地域クラブになって何が変わる?何が変わらない?

地域クラブへの移行で変わるポイントは主に3つあります。安全管理の主体が学校から地域クラブの運営団体に移ること、賠償責任や適用される保険の整理が運営主体によって変わること、基本的な保険が災害共済給付からスポーツ安全保険等に変わること――いずれも大きな変化です。

賠償責任の法的根拠については、市区町村が運営主体の場合は国家賠償法が前提となる場面がある一方、市区町村以外の団体が運営する場合は民法上の注意義務(安全配慮義務)が中心となり、民間保険等で備える整理になります。

一方、変わらないポイントもあります。指導者に求められる安全配慮義務の水準は同等です。事故が起きた場合に運営団体が責任を問われる構造も変わりません。

さらに新ガイドラインでは安全確保体制が認定要件に明記されており、制度面での手当がなされています。担い手が変わっても、安全を守る仕組みの整備は着実に進んでいる状況です。

🔄 地域クラブ移行で「変わること」と「変わらないこと」
項目 学校部活動 地域クラブ
変わる
安全管理の主体
学校(校長・顧問教員) 地域クラブ運営団体
変わる
賠償責任の根拠
国家賠償法(公立校) 運営主体によって異なる(市区町村=国賠法、その他=民法)
変わる
基本保険
災害共済給付(JSC) スポーツ安全保険等
同じ
安全配慮義務
指導者に求められる安全配慮義務の水準は同等
同じ
責任構造
事故時に運営団体(学校)が責任を問われる構造は共通
制度整備
認定要件
新ガイドラインで安全確保体制が認定要件に明記

保険制度の違いを正しく理解するための3つのポイントとは?

保護者にとって最も身近な不安は「子どもがけがをしたとき、補償はどうなるのか」ではないでしょうか。学校管理下かどうかで適用される保険制度が異なる点がポイントです。違いを正しく理解しておくことが大切です。

災害共済給付制度の補償範囲はどこまでカバーされる?

災害共済給付制度は、日本スポーツ振興センター(JSC)が運営する公的共済です。学校管理下(部活動を含む)で発生した負傷・疾病に対し、医療費給付、障害見舞金、死亡見舞金が支給されます。

医療費給付は総医療費の4割(自己負担分3割+付加給付1割)で、保護者の実質負担は大幅に軽減されます。ただし、療養に要する費用の総額が5,000円以上(自己負担額1,500円以上)の場合が対象で、少額の場合は給付対象外となります。障害見舞金は最大4,000万円(通学中は2,000万円)、死亡見舞金は3,000万円(通学中は1,500万円)です(出典:日本スポーツ振興センター「給付金額」)。

掛金は保護者と学校設置者の折半で、保護者の年間負担は数百円程度。これほど低い掛金で手厚い給付が受けられる制度が、学校部活動の安全を支えてきました。

※金額や条件は改定されることがあります。最新情報はJSC「災害共済給付 給付金額」ページでご確認ください。

スポーツ安全保険の補償内容と注意すべき点は?

地域クラブで広く活用されるのが、公益財団法人スポーツ安全協会のスポーツ安全保険です。傷害保険、賠償責任保険、突然死葬祭費用保険の3つの補償で構成されています。団体での活動中および集合・解散場所と自宅間の往復中の事故を補償します。

中学生以下の年間掛金は800円から。スポーツ庁からの要請を受けて、災害共済給付制度と同程度の補償内容となるよう改善が行われています(出典:スポーツ安全協会「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン等について」、令和4年12月27日付スポーツ庁通知)。

ただし注意点もあります。入院・通院の補償は実費ではなく1日あたりの定額支給です。通院保険金は1事故30日が上限となっています。加入は団体単位のため、クラブ側が未加入だと無保険になることは押さえておきましょう。また、往復中の補償は「通常の経路」が前提のため、寄り道や経路逸脱があった場合の取扱いは約款に依ります。

※補償内容や掛金は年度により変わることがあります。最新情報はスポーツ安全協会の年度しおりでご確認ください。
📊 災害共済給付 vs スポーツ安全保険 比較表
2つの制度の主な違いを一覧で確認
項目 災害共済給付(JSC) スポーツ安全保険
運営 日本スポーツ振興センター(公的共済) スポーツ安全協会(民間保険)
対象 学校管理下(部活動含む) 団体活動中+往復中
医療費 総医療費の4割給付(自己負担3割+付加給付1割) 入院・通院とも1日あたり定額支給
掛金目安 保護者負担は年間数百円程度(設置者と折半) 中学生以下は年間800円から
障害見舞金 最大4,000万円(通学中2,000万円) スポーツ庁要請を受け同程度に改善
死亡見舞金 3,000万円(通学中1,500万円) スポーツ庁要請を受け同程度に改善
注意点 総額5,000円未満は対象外 通院は1事故30日上限/クラブ未加入で無保険リスク
▲ 金額・条件は改定される場合があります。最新情報は各制度の公式サイトをご確認ください

「補償の空白」を防ぐにはどうすればいい?

移行期に気をつけたいのが「補償の空白」です。学校部活動から地域クラブへの切り替えタイミングで、どちらの保険にもカバーされない期間が生まれるリスクがあります。

確認すべきポイントは4つです。①地域クラブが加入している保険の種類と補償内容の確認、②平日は学校・休日は地域クラブに参加する場合のそれぞれの保険適用範囲の確認、③個人で加入できるスポーツ傷害保険の検討、④認定地域クラブの認定要件に関わる安全確保体制の中で、参加者の保険加入が確認事項に含まれている点の確認です。

特に②は見落としやすいポイントです。学校管理下の活動には災害共済給付、学校管理下でない地域クラブの活動にはスポーツ安全保険等が適用されるため、両方の補償内容を把握しておかなければなりません。

加入状況の確認が、補償の空白を防ぐ重要な第一歩です。不明点がある場合は、自治体の教育委員会やスポーツ担当課に問い合わせることをおすすめします。

⚠️ 「補償の空白」を防ぐ4つの確認ポイント
移行期に見落としやすいリスクと対策
1
保険の種類と補償内容

地域クラブが加入している保険の種類と補償内容を確認する

2
平日・休日の適用範囲

平日=学校(災害共済給付)、休日=地域クラブ(スポーツ安全保険等)。両方の確認が必要

3
個人保険の検討

個人で加入できるスポーツ傷害保険も選択肢の1つ

4
認定要件の確認事項

認定地域クラブでは参加者の保険加入が確認事項に含まれている

▲ 特に②は見落としやすいポイント。不明点は自治体の教育委員会・スポーツ担当課に相談を

認定地域クラブ活動が満たすべき安全確保の基準とは?

令和7年(2025年)12月策定の新ガイドラインでは、「適切な安全確保の体制」が認定地域クラブの要件に明記されました。認定地域クラブ活動とは、国が示す認定要件・認定手続等に基づき、市区町村等が認定したクラブ活動のことです。

具体的にどのような基準が設けられているのか、3つの柱に分けて見ていきましょう。

🏛️ 認定地域クラブの安全確保「3つの柱」
新ガイドライン(令和7年12月策定)で明記された認定要件
📋
事故防止・安全管理
マニュアルの整備
AED設置確認・救急対応体制の構築、保険加入の確認
🔒
日本版DBS
への対応
こども性暴力防止法(R8年12月施行予定)に基づく指導者の性犯罪歴確認
活動時間・休養日
の基準遵守
平日2時間・休日3時間程度、週2日以上の休養日

事故防止・安全管理マニュアルの整備

まず求められるのは、事故防止・安全管理マニュアルの整備です。AED設置場所の確認・救急対応体制の構築など、万が一に備えた体制づくりが認定の前提条件となっています。認定要件の具体的な確認事項(別紙1)では、参加者および指導者が保険に加入していることも確認項目に含まれています。

日本版DBS(こども性暴力防止法)への対応

日本版DBS(こども性暴力防止法)も重要な注目点です。令和8年(2026年)12月に施行予定で、こども性暴力防止法に基づく国の認定を受けた事業者(学習塾やスポーツクラブなど)は、指導者の性犯罪歴確認が可能になります(出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法について」)。

※ここでいう「認定」は、自治体が付与する「認定地域クラブ活動」の認定とは別の制度です。こども性暴力防止法に基づく国の認定制度を指します。現時点では施行前のため、クラブが現在取り得る不適切行為防止策(研修・規範整備・相談窓口の設置等)と、施行後に期待される制度とを分けて理解しておくことが大切です。

活動時間・休養日の基準遵守

活動時間・休養日の基準遵守も認定要件の1つ。平日2時間程度、休日3時間程度を目安に、週2日以上の休養日を設けることが求められています。なお、学校部活動と地域クラブ活動の両方に参加する場合は、活動時間を通算で管理する考え方も示されています。

📐 活動時間・休養日の基準
平日 2 時間程度
休日 3 時間程度
休養日 週2 日以上
▲ 学校部活動と地域クラブの両方に参加する場合は活動時間を通算で管理

自治体による支援の広がり

先進事例として、一部の自治体では認定基準を満たすクラブ向けに安全管理研修の提供やマニュアルのひな形配布を行っています。認定は、国が示す要件に沿って市区町村等が審査し、一定の安全確保体制等が整っていると判断したクラブを可視化する仕組みです。「認定の有無」は保護者にとって有力な判断材料になります。ただし、実際の運用・体制の成熟度にはクラブごとに差があり得るため、入会前の確認は引き続き重要です。

安全確保体制について不明点がある場合は、お住まいの自治体の教育委員会やスポーツ担当課に相談してみてください。

わが子を安心して送り出すための確認チェックリスト

ここまでの知識を踏まえ、保護者が実際に行動に移せる具体的な確認事項を整理しました。入会前のチェックポイントと、万が一の事故発生時の対応フローに分けてご紹介します。

入会前に確認したい5つの安全チェックポイントとは?

✅ 入会前の安全チェックリスト
5つのポイントを入会前に確認しましょう
1
保険の加入状況と補償内容
スポーツ安全保険への加入の有無と補償範囲を確認。クラブが未加入の場合、万が一の際に補償が受けられません。
2
緊急時の連絡体制と対応マニュアルの有無
事故発生時の連絡先が明確か、対応手順が文書化されているかを確認します。
3
指導者の資格・研修受講歴
救急救命講習の受講歴や、新ガイドラインで求められる自治体研修の修了状況を聞いてみましょう。
4
活動場所の安全点検の実施状況
定期的な安全点検の実施や、AEDの設置場所を指導者が把握しているかも大切なポイントです。
5
認定地域クラブ活動の認定取得状況
認定を受けたクラブは国が示す安全基準を満たしていると市区町村等が判断したもの。取得状況や取得予定も聞いておくと安心です。

万が一の事故が起きたら、保護者はどう動けばいい?

🚑 事故発生時の保護者対応フロー
事前に流れを知っておくことが、いざというときの冷静な対応につながります
📞
STEP 1
初動確認
連絡を受けたら、お子さまの状態と医療機関への搬送状況を指導者に確認。軽症に見えても念のため受診させることが大切です。
📝
STEP 2
状況の記録
事故の日時、場所、活動内容、けがの原因を指導者と確認。できるだけ早い段階でメモに残しましょう。保険請求時に必要な情報になります。
📄
STEP 3
保険請求手続き
クラブ運営者と連携して保険請求を進めます。スポーツ安全保険の場合、東京海上日動への事故通知が必要です。
💬
STEP 4
相談窓口の活用
対応に不安がある場合は、自治体の教育委員会やスポーツ担当課に相談しましょう。

✅ まとめ

  • 安全管理の担い手:部活動の地域展開により、安全管理の「担い手」は学校から地域クラブの運営団体へ移行する
  • 賠償責任:賠償責任の法的根拠は運営主体によって異なる(市区町村運営なら国家賠償法、それ以外は民法上の安全配慮義務が中心)
  • 保険制度の切り替え:保険制度は災害共済給付からスポーツ安全保険に切り替わるが、スポーツ庁の要請を受けた補償改善により同程度の水準が確保されている
  • 新ガイドライン:令和7年(2025年)12月策定の新ガイドラインで、安全確保体制が認定地域クラブの要件に明記された
  • 補償の空白防止:「補償の空白」を防ぐため、学校管理下と地域クラブそれぞれの保険適用範囲を確認することが重要
  • 入会前チェック:入会前チェックリストを活用し、保険加入状況・緊急時対応体制・指導者資格を確認しておくと安心

まずは、お子さまが参加するクラブの保険加入状況と認定取得状況を確認するところから始めてみてください。

📚 参考文献

スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月)
スポーツ庁「部活動改革ポータルサイト」
独立行政法人日本スポーツ振興センター「災害共済給付制度」
独立行政法人日本スポーツ振興センター「給付金額」
公益財団法人スポーツ安全協会「スポーツ安全保険」
公益財団法人スポーツ安全協会「学校部活動の地域連携・地域クラブ活動」
公益財団法人スポーツ安全協会「ガイドライン等について」(スポーツ庁通知における補償改善の言及を掲載)
こども家庭庁「こども性暴力防止法について」

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