【速報】部活動の地域展開 新ガイドライン徹底解説|令和8年度から何が変わる?
📌 この記事でわかること
- 「地域移行」から「地域展開」への名称変更が意味する改革の本質
- 令和8〜13年度の改革スケジュールと中間評価のポイント
- 認定地域クラブ活動の7つの要件と認定メリット
- 教師・指導者・保護者それぞれの立場で今すぐ確認すべきポイント
部活動の地域展開(学校と地域が連携して子どもたちのスポーツ・文化活動の場を広げていく取り組み)、いよいよ本格始動へ——。
「うちの自治体は準備が間に合うの?」「教員として、地域クラブに関わらなければならないの?」「子どもの高校入試に影響はある?」
そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
令和7年(2025年)12月、スポーツ庁・文化庁は「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」を策定し、全国の教育委員会等へ通知しました。
この記事を読めば、新制度の全体像と、あなたの立場で今すぐ取るべきアクションが明確になります。
結論として、今回の改革では教師の兼職兼業について「本人の意思尊重」が明記され、望まない参加を強いられないよう求められています。学校と地域が協力する新しい形が示されました。
変化を正しく理解すれば、不安なく対応できるはずです。
なぜ今、新ガイドラインが策定されたのか?
令和4年(2022年)12月に策定された前ガイドラインから、約3年が経過しました。
この間、全国各地で部活動の地域連携・地域クラブ活動への移行に向けた実証事業が行われ、多くの成果と課題が蓄積されてきたのです。
前ガイドラインでは、令和5〜7年度(2023〜2025年度)を「改革推進期間」と位置づけ、各自治体が地域の実情に応じて準備を進めてきました。
しかし、この3年間で日本の教育現場を取り巻く状況は大きく変化しています。
ガイドラインでは「急激な少子化が進む中、地方部を中心として学校部活動を巡る状況は厳しくなっている」と指摘されています。
同時に、教員の働き方改革への意識も高まり、休日の部活動指導のあり方を見直す機運がいっそう強まっています。
今回の新ガイドラインは、こうした状況変化を踏まえ、「改革推進期間」から「改革実行期間」へとフェーズを移行させる重要な転換点。
令和8年度(2026年度)からの6年間で、部活動の地域展開を着実に進めるための具体的な道筋が示されました。
【先進事例:つくば市の取り組み】
茨城県つくば市では、休日の部活動を地域クラブ活動へ展開する取り組みを進めています。
市の公式サイトでは、専門的指導者の確保の重要性や、費用負担の変化についても言及されています(出典:つくば市公式サイト「部活動のこれから」)。
なぜ「地域移行」から「地域展開」へ?名称変更に込められた3つの意図
今回のガイドラインで最も注目すべき変更点は、「地域移行」から「地域展開」への名称変更。
この変更には、3つの重要な意図が込められています。
意図①「移す」から「広げる」へ
「地域移行」という言葉は、学校から地域へ責任を単純に移すという印象を与えていました。
しかし「地域展開」は、学校と地域が連携しながら、子どもたちの活動の場を広げていくという考え方を表しています。
学校だけが担うのではなく、地域全体で子どもたちのスポーツ・文化芸術活動を支える体制を構築する——そうした発想の転換です(出典:スポーツ庁「新ガイドライン」)。
意図② 学校との関わりは継続
「地域展開」には、学校が引き続き重要な役割を担うという前提が含まれています。
学校施設の活用、教師の兼職兼業による指導参加など、地域展開後も学校は子どもたちの活動を支える重要な存在。
「学校か地域か」という二者択一ではなく、「学校も地域も」という協働の姿勢が示されました。
意図③ 新たな価値の創出
「地域展開」という言葉には、従来の部活動にはなかった新しい価値を生み出すという期待も込められています。
複数の競技種目に取り組むマルチスポーツ、スポーツと文化芸術の融合、学校段階にとらわれない継続的な活動(引退のない活動)などがその例です。
単なる制度変更ではなく、子どもたちにとってより豊かな活動環境を創造するという前向きな方向性が示されています。
令和8〜13年度、何がどう進む?改革実行期間のロードマップ
令和8〜13年度(2026〜2031年度)の6年間が「改革実行期間」と位置づけられました。
この期間は、さらに前期と後期の2段階に分けられています。
前期・後期の2段階で進む6年間
📅 改革実行期間のロードマップ
前期:令和8〜10年度(2026〜2028年度)
前期の3年間は、休日の地域展開を原則としてすべての学校で実現することを目指す期間(出典:スポーツ庁「新ガイドライン」)。
各自治体において地域クラブ活動の受け皿を整備し、休日の部活動を学校から地域へと展開していきます。
後期:令和11〜13年度(2029〜2031年度)
後期の3年間は、前期の成果を踏まえ、さらなる改革を推進する期間。
平日の地域展開については、地域の実情に応じた柔軟な対応が認められています。
離島や中山間地域など、地理的条件により地域展開が困難な地域については、特例措置も設けられました。
前期終了後の中間評価が重要な節目
ガイドラインでは、前期終了後に国が改革の進捗状況を検証し、後期の方針を策定するとされています。
自治体や学校にとっては、前期(令和10年度まで)に一定の成果を出すことが求められる重要な節目となるでしょう。
この中間評価までに、地域クラブ活動の運営体制、指導者の確保、財源の安定化などの基盤を固めること——これが改革成功の鍵を握ります。
具体的な体制整備の進め方については、各都道府県の推進計画や、スポーツ庁の相談窓口をご確認ください。
【先進事例:新潟市の段階的アプローチ】
新潟市では、令和5年度に有識者協議会を立ち上げ、モデル校での休日の地域展開を段階的に進めています(出典:新潟市「部活動の地域展開推進方針」)。
「段階的に進めることで、課題を一つずつ解決できています」(市教育委員会担当者)。
令和8年度の本格実施に向けて、着実に準備を進めています。
認定地域クラブ活動とは?新設制度の7つの要件とメリットを解説
今回の新ガイドラインで最も実務的に重要な変更が、「認定地域クラブ活動」(市区町村等が一定基準を満たすと認定した地域クラブ)制度の新設。
部活動の教育的意義を継承しながら、地域での活動を推進する仕組みです。
認定を受けるための7つの要件
認定地域クラブ活動として認められるためには、以下の7つの要件を満たす必要があります(出典:スポーツ庁「新ガイドライン」)。
✅ 認定地域クラブ活動の7つの要件
① 教育的意義の継承・発展
学校部活動が担ってきた教育的価値を地域においても継続することが求められています。技能向上だけでなく、生徒同士の人間関係構築、責任感や連帯感を育むといった教育的側面を重視した運営が不可欠です。
② 適切な活動時間・休養日の設定
活動時間や休養日を適切に設定していることが求められています。具体的な目安として、学校部活動では平日2時間程度、休日3時間程度、週合計11時間程度以内、週2日以上の休養日が示されており、学校部活動と地域クラブ活動の両方に参加する場合は通算で週11時間程度以内とする必要があるとされています(出典:新ガイドライン p.28-29)。
③ できるだけ安価な参加費の設定
経済的事情により参加を諦めることがないよう、できる限り手頃な会費設定への配慮が必要。すべての子どもに活動機会を保障するという公教育の理念を継承しています。
④ 適切な指導体制の確保
日本版DBSの活用を含む、指導者の質の確保が求められています。暴力・ハラスメントのない安全な指導環境を整備し、指導者に対する研修の実施も必要条件。
⑤ 安全確保体制の整備
事故防止、緊急時対応、保険加入などの体制を整備することが求められています。
⑥ 適切な運営体制の確保
組織としてのガバナンス、会計の透明性など、継続的かつ安定的な運営体制の確保が不可欠。
⑦ 学校との連携
学校との情報共有、施設利用の調整、生徒の状況把握——こうした学校と地域クラブの連携体制も重要な要件です。
認定されると何が変わるのか
認定を受けることで、地域クラブには3つの主なメリットがあります。
💡 認定を受ける3つのメリット
- 公的支援の対象となる——国・自治体からの財政支援を受けやすくなります。運営費の補助や指導者への謝金支援など、持続的な運営に必要な支援を受けることが可能に。
- 学校施設の優先利用等——国は、認定地域クラブ活動に対して学校の体育館やグラウンドなどの優先的な利用等が図られるよう、各自治体に配慮を求めています。
- 大会参加資格の明確化——中体連・高体連主催の大会等への参加がスムーズになります。
令和8年度(2026年度)末までの経過措置
新制度の開始直後は、認定基準を完全に満たすことが難しいクラブも多いことが想定されます。
そのため、ガイドラインでは「円滑な実施の観点から、一定の経過措置を設定(原則として令和8年度末まで)」と明記されています(出典:新ガイドライン p.9)。
経過措置の具体的な運用については、別冊資料①「地域クラブ活動に関する認定制度」に詳細が示されています。
教師は地域クラブで指導しなければならない?兼職兼業の新ルールとは
新ガイドラインでは、教師の兼職兼業について「意思尊重」が明文化されました。
これは、教師にとって非常に重要な変更点です。
希望しない教師への強制は禁止
新ガイドラインでは、地域クラブでの指導を希望しない教師に対して、兼職兼業を強制してはならないことが明確にされました。
「指導したい人が指導する」という選択の自由が保障されています。
希望する教師には積極的な許可を
逆に、地域クラブでの指導を希望する教師に対しては、教育委員会が積極的に兼職兼業を許可するよう求められている点も重要です。
対象の拡大
対象となる教師の範囲も広がりました。
中学校教師に限らず、小学校教師・高校教師・事務職員等も対象に。
教師にとっては、「強制される負担」から「選択できる機会」への転換です。
【現場の声:中学校教員Aさん】
「正直、休日の部活指導は負担でした。でも、選択制になったことで、本当に指導したい先生が関わるようになり、生徒への指導の質も上がったと感じています」
活動は週何時間まで?休養日は?新基準を確認
新ガイドラインでは、認定地域クラブ活動における活動時間と休養日について、具体的な数値基準が示されています。
⏰ 活動時間と休養日の目安
【活動時間の目安】
- 平日:2時間程度
- 休日:3時間程度
- 週合計:11時間程度以内
【休養日の設定】
- 週2日以上
これらの数値は「上限」ではなく「目安」として示されています。
ただし、従来の部活動で問題視されていた長時間活動の是正が大きな目的であることを理解しておく必要があるでしょう。
保護者や生徒にとっては、学業との両立がしやすくなるというメリットがあります。
子どもの安全はどう守られる?日本版DBSと指導者確認制度
新ガイドラインでは、地域クラブ指導者の安全確保策として、日本版DBSの活用が明記されました。
日本版DBSとは
日本版DBSは、「こども性暴力防止法」(正式名称:学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)に基づく性犯罪歴確認制度(出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法について」)。
子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認できる仕組みで、雇用時のリスク低減や再犯防止が期待されています。
認定地域クラブ活動指導者への適用
新ガイドラインでは、認定地域クラブ活動の指導者についても日本版DBSの活用が明記されました。
「認定地域クラブ活動指導者」という登録制度も設けられており、詳細は別冊資料①に示されています(出典:新ガイドライン p.8, p.15)。
保護者にとっては、子どもを安心して預けられる環境が整備されるという点で、大きな安心材料となるでしょう。
地域クラブでの活動は内申書に書ける?高校入試・大会参加への影響
部活動の地域展開において、保護者が気にするポイントの一つが高校入試への影響。
新ガイドラインでは、この点についても明確な方針が示されています。
高校入試での扱い
新ガイドラインでは、学校部活動と地域クラブ活動で、内申書・調査書の評価に差異が生じないよう配慮することが明記されました。
地域クラブでの活動実績も、学校部活動と同等に評価される方向性が示されています。
大会参加の円滑化
ガイドラインでは、認定地域クラブ活動からの大会・コンクールへの円滑な参加や、大会等の参加規程の見直しに言及しています(出典:新ガイドライン p.30)。
なお、具体的な参加要件は各年度の大会参加規程で確認が必要です。
広域での活動
地域クラブ活動においては、生徒の居住地域にとらわれない活動も想定されています。
ただし、複数市区町村にまたがる活動や隣接都道府県との連携については、別冊資料等で詳細が示されている可能性があり、具体的な運用は各自治体の設計や大会規程によって異なります。
【保護者の声】
「内申書への影響が心配でしたが、地域クラブでの活動も同等に評価されると聞いて安心しました。子どもには、学校でも地域でも、自分に合った環境で頑張ってほしいです」
まとめ
ここまで、新ガイドラインの全体像を見てきました。
令和8年度(2026年度)からの「改革実行期間」に向けた具体的な道筋が示されたことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
「地域移行」から「地域展開」への名称変更は、学校と地域が協力して子どもたちの活動を支えるという、改革の本質を表しています。
【本記事のポイント】
- 「地域展開」は学校と地域の協働。「移す」のではなく「広げる」発想
- 令和8〜13年度の6年間が改革実行期間。前期終了後の中間評価が重要な節目
- 認定地域クラブ活動制度により、公的支援・施設利用・大会参加がスムーズに
- 教師の兼職兼業は「選択制」。希望しない教師への強制は禁止
- 高校入試では、地域クラブ活動も学校部活動と同等に評価される方向
立場別ネクストアクション
🎯 あなたの立場で今すぐすべきこと
【自治体担当者の方へ】
推進計画の見直し・策定を進めましょう。認定制度の運用体制整備を優先課題として、令和8年度のスタートに向けた準備を加速させてください。
【教員の方へ】
ご自身の関わり方の選択肢を理解しておきましょう。兼職兼業は「強制」ではなく「選択」であることが明確にされています。
【指導者・コーチ志望の方へ】
認定制度と日本版DBSへの対応準備を始めましょう。指導者としての資格取得や研修受講を検討してください。
【保護者の方へ】
費用や安全管理の変化を把握しておきましょう。お子さんの学校や地域の動向をウォッチし、疑問点があれば学校や教育委員会に確認してください。
【地域クラブ運営者の方へ】
認定取得に向けた体制整備を進めましょう。令和8年度末までの経過措置期間を有効に活用し、7つの認定要件を満たすための準備を計画的に進めてください。
📚 参考文献
- スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(令和7年12月) https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/1405720_00025.htm
- スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(概要) https://www.mext.go.jp/sports/content/20251215-spt_oripara-000046180_001.pdf
- スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」(本文・別冊資料) https://www.mext.go.jp/sports/content/20251222-spt_oripara-000046180_00234.pdf
- スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドラインの策定について(通知)」https://www.mext.go.jp/sports/content/20251215-spt_oripara-000046180_00005.pdf
- こども家庭庁「こども性暴力防止法について」https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou