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学校・教員向け

【第9回】部活動の地域展開で教員の働き方はどう変わる?

📅 2025年12月26日 更新

📌 この記事でわかること

  • 部活動地域展開による教員の時間外勤務削減の具体的な数値と実態
  • 地域展開後も学校側に残る業務と新たに発生する連携業務の全体像
  • 働き方改革の効果を実感するための4つの実務ポイント

「部活動の顧問を引き受けてから、土日が完全になくなってしまった……」

そう感じている教員の方は少なくないはずです。令和4年度(2022年度)の文部科学省の調査では、中学校教諭の土日の在校等時間は1日平均2時間18分。部活動の顧問を担当している教員に限れば、その時間はさらに長くなります(出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」6ページ)。

令和8年度(2026年度)から始まる「改革実行期間」では、休日の部活動が地域クラブへと段階的に移行していきます。

ここでいう「地域クラブ活動」とは、学校部活動に代わり、地域の団体やクラブが主体となって行うスポーツ・文化活動のこと。「本当に負担は減るのだろうか」「新しい業務が増えるのでは」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。

この記事では、地域展開によって「減る業務」「残る業務」「新たに発生する業務」を整理し、学校運営の全体像を明らかにします。学校・教員編の第1回として、今後の連載で詳しく解説する内容への橋渡しも意識しながら、教員が知っておくべきポイントをまとめました。

地域展開で教員の働き方はどう変わる?

部活動の地域展開は、教員の働き方改革と深く結びついています。休日の指導負担をどの程度軽減できるのか、データと仕組みの両面から見ていきましょう。

時間外勤務はどれくらい削減できるのか?

文部科学省が令和4年度(2022年度)に実施した教員勤務実態調査によると、中学校教諭の土日の在校等時間は1日平均2時間18分でした。平成28年度(2016年度)調査の3時間22分から約1時間減少したとはいえ、依然として長い状況が続いています(出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」6ページ)。

土日の在校等時間のうち、「部活動・クラブ活動」に費やす時間が最も長い点が中学校教員の特徴といえるでしょう。土日の部活動時間は平均1時間29分で、土日の在校等時間全体の約65%を占めています(出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】」18ページ)。

📊 中学校教諭の土日の在校等時間(令和4年度)

2時間18分
そのうち部活動が約65%(1時間29分)を占める

地域クラブ活動への移行に向けた実証事業では、休日の部活動を地域に移行した学校において、教員の時間外勤務が削減されたという報告がスポーツ庁から出ています(出典:スポーツ庁「部活動改革ポータルサイト」)。ただし、削減効果には地域差や競技種目による差があり、すべての学校で同様の効果が得られるわけではありません。

なぜ土日の負担が軽減されるのか?

休日の部活動が地域クラブに移行すると、教員は土日に学校へ出勤して指導する必要がなくなります。これが負担軽減の基本的な仕組みです。

従来、大会引率や練習試合への対応は教員の職務でした。地域展開後は、これらの業務も地域クラブの指導者が担う形に変わります。

教員が休日に部活動に関わる義務はなくなり、家族との時間や自己研鑽の時間を確保しやすくなるでしょう。

令和7年(2025年)5月に決定された最終とりまとめでは、令和8年度〜令和13年度を「改革実行期間」と位置づけています。このうち令和8〜10年度を「前期」、令和11〜13年度を「後期」とし、前期の間に休日の地域展開に着手することが求められています(出典:スポーツ庁「最終とりまとめ概要」2ページ)。

📅 改革実行期間のタイムライン

1
令和8〜10年度(前期)
休日の地域展開に着手。平日の活動のあり方や課題への対応策等を検証。
2
令和10年度末(中間評価)
前期の取り組みを評価し、後期の取り組み方針を決定。
3
令和11〜13年度(後期)
中間評価を踏まえた地域展開を本格実施。

ただし、「完全に関わらなくなる」わけではないケースもあります。休日の指導を希望する教員は、兼職兼業の許可を得た上で、地域クラブの指導者として活動を続けることが可能です。

ここでいう「兼職兼業」とは、公務員である教員が本業の職務以外に、報酬を得て他の仕事に従事すること。これはあくまで教員自身の希望に基づくものであり、学校や教育委員会から強制されるものではありません(出典:文部科学省「公立学校の教師等が地域クラブ活動に従事する場合の兼職兼業について(手引き)」)。兼職兼業の詳細については、第12回で詳しく解説します。

地域展開後も学校に残る業務とは?

「地域展開によって、学校は部活動から完全に手を引く」という誤解をお持ちの方もいるかもしれません。しかし実際には、学校側に引き続き残る業務があります。

減る業務

  • 休日の部活動指導
  • 大会引率・練習試合対応
  • 土日の出勤義務
  • 休日の活動計画立案

残る業務

  • 平日の活動調整
  • 施設管理・利用調整
  • 生徒指導・教育相談
  • 学校行事との調整

新たな業務

  • 地域クラブとの情報共有
  • 連携会議への参加
  • 保護者対応窓口整理
  • 地域との連絡調整

平日の活動ではどんな調整業務が残るのか?

最終とりまとめでは、休日の地域展開を優先的に進めることが示されています。平日の改革については、前期(令和8〜10年度)において活動のあり方や課題への対応策等の検証を行った上で、中間評価の段階であらためて取組方針を定めるとされています(出典:スポーツ庁「最終とりまとめ概要」2ページ)。

そのため、多くの地域では当面、平日の部活動は学校で継続するケースが多くなるでしょう。平日の調整業務は引き続き学校側の役割となります。具体的には以下のような業務が挙げられます。

  • 学校施設(体育館、グラウンド、音楽室など)の管理と利用調整
  • 下校時間とのかねあいを考慮した活動時間の設定
  • 定期テスト期間や学校行事との調整
  • 生徒の出欠管理と安全確認

ただし、地域の実情によっては、休日とあわせて平日の地域展開にも取り組む自治体もあります。その際は、学校と地域クラブの間でより緊密な連携が必要になり、施設の利用ルールや生徒の引き渡し方法なども明確にしておく必要があるでしょう。

生徒指導や教育相談はどう連携すべきか?

部活動は、単なるスポーツや文化活動の場にとどまりませんでした。生徒の居場所づくり、人間関係形成の支援、自己肯定感の向上など、生徒指導的な機能も担ってきたのです。

この教育的な意義は、地域展開後も継承・発展させることが重要とされています。地域クラブでの活動中に生徒間トラブルが発生したり、不登校傾向の兆候が見られたりした場合には、学校との情報共有が必要です。

最終とりまとめでも、「部活動の教育的意義の継承・発展」が重要なコンセプトとして示されています。地域クラブ活動においては、新たな価値(多種多様な体験、学校等の垣根を越えた仲間とのつながり、様々な世代との交流など)を創出することも期待されています(出典:スポーツ庁「最終とりまとめ概要」1ページ)。

学校と地域クラブが連携しながら、生徒の成長を見守る体制を構築していくことが求められるでしょう。教育的価値の継続については、第14回で詳しく解説します。

新たに発生する連携業務にはどんなものがある?

地域展開によって「減る業務」がある一方で、「新たに発生する業務」もあります。この点を正確に把握しておくことが、働き方改革の効果を実感するための第一歩です。

地域クラブとはどんな情報を共有すべきか?

学校と地域クラブの間では、さまざまな情報を共有する必要があります。情報共有の仕組みが整っていないと、生徒に負担がかかったり、連絡の行き違いが発生したりするリスクがあるためです。

共有すべき情報の例を挙げてみましょう。

  • 生徒の健康状態やアレルギー情報
  • 学校行事の予定(定期テスト、体育祭、文化祭など)
  • テスト期間中の活動調整
  • 生徒の出欠状況や遅刻・早退の連絡
  • 活動中に気になった生徒の様子

情報共有の方法としては、定期的な連絡会の開催やICTツールの活用が考えられます。各自治体では、協議会を設置して学校と地域クラブの連携体制を整備しています。

連携がうまくいかない場合、生徒が学校行事と地域クラブの活動でタイトなスケジュールになってしまったり、保護者への連絡が二重になってしまったりする問題が起こりえます。第11回「地域クラブとの連携実務」では、スムーズな連携のための具体的な方法を解説します。

保護者からの問い合わせにはどう対応すべきか?

地域展開後、部活動に関する保護者からの問い合わせ先はどう変わるのでしょうか。この点を明確にしておかないと、「学校に聞いても分からない」「たらいまわしにされた」という不満につながりかねません。

原則として、休日の地域クラブ活動に関する問い合わせ窓口は地域クラブです。活動内容、参加費用、指導者に関する質問などは、地域クラブへ直接連絡してもらう形になります。

一方、平日の学校部活動に関すること、生徒の学校生活全般に関することは、従来通り学校が対応します。また、学校と地域クラブの連携に関する全体的な方針については、教育委員会や自治体が窓口となる場合もあるでしょう。

保護者への説明については、自治体編の第8回で解説しています。保護者が混乱しないよう、学校・地域クラブ・自治体の役割分担を事前に明確にしておくことが大切です。

具体的な対策としては、保護者向け説明会の開催、Q&A資料の配布、問い合わせ先一覧の周知などが有効でしょう。

働き方改革の効果を最大化するには?

ここまでの内容を踏まえ、教員が働き方改革の効果を実感するために押さえておくべき4つのポイントを整理します。

📝 ①早期の情報収集と準備

自治体や学校がどのような方針で地域展開を進めるのか、できるだけ早く情報を収集しましょう。協議会の設置状況や推進計画の内容を確認し、自分の学校のスケジュールを把握しておくことが大切です。

⚠️ ②「残る業務」と「新たな業務」を過小評価しない

休日の負担が軽減される一方で、平日の調整業務や地域クラブとの連携業務は残ります。「すべてが楽になる」と考えるのではなく、業務内容の変化を正確に理解した上で準備を進めましょう。

💻 ③ICTツールの活用で連携業務を効率化

学校と地域クラブの情報共有には、ICTツールの活用が効果的です。メールやチャット、クラウド上での予定共有など、効率的な連絡手段を検討しましょう。DX・ICT活用については第36回で詳しく解説します。

💼 ④兼職兼業を希望する場合は手続きを早めに確認

休日も指導を続けたいと考えている教員は、兼職兼業の手続きについて教育委員会に確認しておきましょう。報酬を得て地域クラブで指導する場合は、服務監督教育委員会による許可が必要です。詳細は第12回「兼職兼業ガイド」で解説します。

教員自身が主体的に情報を取りに行く姿勢が、働き方改革の効果を最大化する鍵となるでしょう。

まとめ

この記事のポイントを振り返りましょう。

  • 地域展開により、休日の部活動指導負担は軽減される。令和4年度調査では中学校教諭の土日の在校等時間は平均2時間18分であり、そのうち部活動が約65%を占めている
  • 一方で、平日の活動に関する調整業務や生徒指導との連携など、学校に残る業務がある
  • 地域クラブとの情報共有や保護者対応の窓口整理など、新たに発生する連携業務もある
  • 全体像を把握し、早期に準備を進めることで、働き方改革の効果を最大化できる

学校・教員編は全6回で構成されています。次回以降、役割・責任の明確化、地域クラブとの連携実務、兼職兼業ガイドなど、さらに詳細な内容を解説していきます。

変化に不安を感じることもあるかもしれません。しかし、正しく理解し準備を進めれば、必ず対応できます。子どもたちのより良い活動環境のために、一緒に学んでいきましょう。

次回予告:第10回では「地域展開後の教員の役割と責任範囲の明確化ガイド」を詳しく解説します。

📚 参考文献

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