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【第12回】地域クラブ指導者として兼職兼業する手続きと報酬の実態

📅 2026年1月9日 更新

📌 この記事でわかること

  • 部活動の地域展開における兼職兼業の法的根拠と、令和7年(2025年)12月の新ガイドラインで示された「本人意思の尊重」の具体的な意味
  • 兼職兼業の許可申請に必要な手続きの流れ
  • 地域クラブ指導者としての報酬形態と契約時の確認ポイント
  • 副収入を得た場合の確定申告と社会保険の扱い

「地域クラブでも生徒の指導を続けたい」「でも公務員が副業しても大丈夫なの?」――部活動の地域展開が進む中、こうした思いを抱える教員は少なくありません。

長年つちかった指導経験を活かしたいという前向きな気持ちがある一方で、「手続きが複雑そう」「本当に許可されるのか」といった不安の声も聞こえてきます。

令和7年(2025年)12月に文部科学省により策定された「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、地域クラブ指導に関わる際に「本人の意思を尊重し、望まない参加を強いられないよう確認する」ことが明記されました。指導を続けたい教師には兼職兼業の道が開かれており、特に認定地域クラブ活動については、積極的な許可と円滑な環境整備を進める方向性が示されています。

本記事を読めば、兼職兼業の法的根拠から申請手続き、報酬の考え方、税金の扱いまで、検討に必要な判断材料がすべてそろいます。選択肢として正しく理解することで、自分に合った関わり方を見つけられるでしょう。

ご注意: 兼職兼業の運用は自治体・教育委員会の規程や認定制度の運用によって異なります。本記事は「基本的な流れ」として活用いただき、実際の手続きは所属の自治体・教育委員会へご確認ください。

教員の兼職兼業は本当にできる?法的根拠と新ガイドラインの内容とは

教員の兼職兼業は「禁止」ではなく「許可制」です。

令和7年(2025年)12月に策定された新ガイドラインでは、特に認定地域クラブ活動について、学校運営等に支障がない範囲で積極的許可を進め、希望者が円滑に兼職兼業できる環境整備が求められています。法的根拠と新ガイドラインの内容を順に見ていきましょう。

兼職兼業の法的根拠とは?

公立学校の教師等が兼職兼業を行う際の法的根拠は、対象者によって異なります。

📘 教員(教育公務員)の場合

教育公務員特例法第17条により、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業等に従事することは、任命権者の許可を得れば認められています

地域クラブでの指導は学校部活動とは別枠になり得るため、教育に関する他の職・事業等として任命権者の許可を得て従事する形が基本となります(運用は自治体規程による)。

📗 事務職員等(行政職等)の場合

事務職員等は、地方公務員法第38条の許可制の枠組みで判断されます。営利企業への従事について制限が設けられていますが、任命権者の許可を得れば兼職兼業が可能です。

文部科学省の手引きでは、「教師等(事務職員等を含む)」について、地方公務員法38条や教育公務員特例法17条等に基づき、許可を得て兼職兼業が可能と整理されています。

許可にあたっての審査観点

  • 本務への支障がないこと
  • 公務員としての信用を傷つけないこと
  • 職務専念義務との両立が確保されること

つまり、兼職兼業は法的根拠のある正当な活動。「グレーゾーン」ではなく、制度として認められた選択肢であることを理解しておきましょう。

新ガイドラインで示された「本人意思の尊重」とは?

令和7年(2025年)12月に文部科学省により策定された「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、地域クラブ指導に関わる際の「本人意思の尊重」が明確にされました。この明記には大きな意義があります。

新ガイドラインの重要ポイント(3つ)

1. 希望しない教師に参加を強いることがないよう確認が必要

ガイドライン本文には「本人の意思を尊重」し、「望まないのに参加を強いられることがないよう十分に確認」する旨が明記されています。管理職からの圧力や暗黙の強制は認められません。文部科学省の手引きでも「断れない事態は防がなければならず、そうした依頼を行ってはなりません」と記載されています。

2. 認定地域クラブ活動への積極的許可

認定地域クラブ活動とは、国が示す要件・手続に基づき市区町村等が認定した活動です。認定されることで、情報提供・公的支援等が想定されるほか、教師の兼職兼業についても積極的に許可する方向性が示されています。また、国が示す規程等のひな型を参考に関係規程等を整備・周知し、希望者が円滑に兼職兼業できる環境づくりが求められています。

3. 対象範囲について

ガイドラインの主な対象は公立中学校等の生徒の活動です。ただし、国私立中学校等や高等学校においても、ガイドラインの内容を参考に取組を進めることが望ましいとされています。小学校教師、高校教師、特別支援学校の教師、事務職員等も、条件や自治体の運用次第で兼職兼業の対象となり得ます。

この明記により、制度上、本人の意思確認と圧力防止が求められることが明確になりました。やりたい人が選びやすく、やりたくない人が断りやすい環境整備が求められています。

⚠️ 無償ボランティアについて

実費弁償のみの活動(無償ボランティア)については、手引きでは「兼職兼業許可の対象外になり得る」旨が整理されています。ただし、実費弁償の範囲解釈や事前届出の要否は自治体・学校の運用で異なるため、必ず所属先に確認してください。一方、労務の対価として謝礼がある有償ボランティアは許可が必要です。

許可申請から活動開始まで、どんな手順が必要?5ステップで解説

兼職兼業の許可申請は「難しそう」と思われがちですが、手順を踏めばスムーズに進められます。不明点があれば、早めに管理職や教育委員会に相談するのがおすすめです。意向確認から活動開始までの5つのステップを確認しましょう。

1

意向確認

自分自身の希望を整理し、活動可能な時間帯や頻度を明確にします。

2

書類準備

必要書類をそろえ、申請内容を整えます。

3

申請提出

管理職を通じて任命権者(教育委員会)へ提出します。

4

審査

本務への影響等が審査されます。

5

許可・活動開始

許可が下りれば、地域クラブでの活動を開始できます。

申請に必要な書類と手続きの流れは?

必要書類は自治体の規程・様式によって異なります。文部科学省の手引きによると、一般的な流れは以下のとおりです。

まず、兼職兼業希望先からの依頼状を踏まえ、上司である校長等に相談します。校長等の了承を得たうえで、服務監督教育委員会へ兼職兼業の許可を申請します。

申請にあたっては、活動内容・時間・報酬が分かる資料(契約案等)の提出を求められるのが一般的です。記載にあたっては、以下のポイントを意識しましょう。

申請書記載のポイント

  • 本務への影響がないことを具体的に説明
    「活動は休日のみ」「月○回程度」など、本務の授業や校務に支障がないことを明確に示します。
  • 教育的意義を明記
    「生徒の活動継続を支援する」「長年の専門性を地域に還元する」など、教育活動としての意義を説明しましょう。

文部科学省のウェブサイト(部活動改革に関する新たなガイドラインのページ「関連通知等」欄)では「兼職兼業要綱ひな型(Word)」が公開されており、自治体での規程整備の参考になります。ガイドライン本文でも「国が示す規程等のひな型を参考に」規程整備を進めるよう促されています。

不明点があれば、申請前に管理職や教育委員会に相談することをおすすめします。

許可が下りるまでの期間と審査基準は?

審査期間は自治体により異なります。具体的な期間は、お住まいの自治体の教育委員会にご確認ください。年度途中での申請も可能ですが、余裕を持った準備が望ましいでしょう。

審査で確認される主なポイント

(具体の運用は自治体規程によります)

  • 本務への支障の有無:授業や校務に影響がないか
  • 信用失墜リスク:公務員としての信用を傷つけないか
  • 勤務日時・健康管理:長時間労働にならないか
  • 報酬額などの確認:契約内容の妥当性は自治体運用による

なお、自治体によっては、一定期間をまとめて許可を得る運用を設けている場合もあります。こうした運用があるかどうかは自治体ごとに異なりますので、詳細は所属の教育委員会にお問い合わせください。

地域クラブ指導者の報酬はどう決まる?契約形態と確認ポイント

「報酬はどのように決まるのか」は、兼職兼業を検討するうえで重要な判断材料です。報酬は地域・競技・活動内容・契約形態により異なりますが、基本的な考え方を押さえておきましょう。

契約形態の種類と報酬の決まり方

文部科学省の手引きによると、地域クラブ活動における報酬は運営団体・実施主体との契約関係において決定されます。

報酬の「払い方(時給・月額・1回あたり)」に加え、契約の法的な形態を必ず確認しましょう。手引きでは主に以下の形態が整理されています。

契約形態 説明 特徴
雇用 運営団体に雇用される形態 最低賃金が適用される
業務委託・委託(委嘱) 運営団体から業務を委託される形態 一般に指揮命令関係がなく、報酬は謝金・委託報酬として支払われる
有償ボランティア 労務の対価として謝礼がある形態 兼職兼業許可が必要
無償ボランティア 実費弁償のみの場合 手引きでは許可の対象外になり得るとされるが、自治体・学校の運用で届出等が必要な場合あり

⚠️ 重要:契約形態は「実態」で判断される

契約書の名称が「業務委託」であっても、実態として指揮命令関係がある、勤務時間が拘束されている、代替性がない等の場合は、法的に「雇用」と判断される可能性があります。契約前に運営団体と働き方の実態をすり合わせておくことが重要です。

勤務時間の把握・管理について

文部科学省の手引きでは、雇用形態の場合の労働時間通算や健康管理について留意事項が示されています。在校等時間を含めた就業時間の把握・調整を行い、長時間労働にならないよう管理することが重要です。

契約時に確認すべきポイント

契約時には、以下の点を確認しておきましょう。

契約時の確認チェックリスト

  • 契約形態:雇用か業務委託か(実態も含めて)
  • 報酬額と支払い方法:時給か月額か、支払い時期はいつか
  • 交通費の支給有無:実費支給か、報酬に含まれるか
  • 用具購入費の負担:誰が負担するか
  • 源泉徴収の有無:報酬から天引きされるか
  • 契約期間と更新条件:いつまでの契約か、更新はどうなるか
  • 保険の加入状況:団体で加入しているか、個人加入が必要か
  • 勤務時間の把握:本務との合計で長時間労働にならないか

なお、雇用契約の場合は最低賃金法が適用されます。不明な点があれば、契約前に地域クラブ側と確認することが大切です。

事故・ケガへの備え(保険について)

地域クラブ活動での事故・ケガへの備えは、生徒向け指導者(教員本人)向けで分けて確認が必要です。

生徒の補償について

日本スポーツ振興センター(JSC)の「災害共済給付制度」は、「学校等の管理下」における災害が対象とされています。

学校の教育計画に基づく「学校部活動」であれば、学校外での活動でも対象になり得ます。一方、一般に地域クラブ活動は学校管理下に当たらず対象外となるケースが多いです(JSCのFAQでも「地域の野球クラブチームの活動」は対象外と例示されています)。

→ 運営団体がスポーツ安全保険等に加入しているか、必ず確認してください。

指導者(教員本人)の補償について

教員本人のケガや疾病は、契約形態によって取り扱いが変わります。

  • 雇用の場合:兼職先での労災保険等の対象となり得る
  • 業務委託の場合:原則として雇用の労災(強制適用)の枠外ですが、条件により労災保険の特別加入制度を利用できる場合があります

2024年(令和6年)11月1日より、企業等から業務委託を受けているフリーランスについて、業種・職種を問わず特別加入できるよう制度が拡大されました。

兼職の契約形態・委託元の属性等により扱いが変わるため、運営団体や労働局・社労士等にも確認しましょう。

副収入を得たら確定申告は必要?税金・社会保険の注意点

兼職兼業で得た報酬は課税対象です。確定申告や社会保険への影響について、正しく理解しておきましょう。

確定申告が必要になるケースとは?

給与以外の所得(収入から必要経費を差し引いた額)の合計が年間20万円を超える場合、原則として所得税の確定申告が必要です。

⚠️ 注意:「収入」ではなく「所得」で判断

たとえば収入が30万円でも、交通費などの必要経費が15万円あれば所得は15万円となり、確定申告は不要となる場合があります。

なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が別途必要となる場合があります。取り扱いはお住まいの自治体の案内でご確認ください。

所得の分類について

兼職兼業による報酬は、契約形態や活動の実態によって所得の分類が異なります。

雇用契約の場合

給与所得

源泉徴収されることが一般的です。

業務委託の場合

雑所得または事業所得

継続性・規模・帳簿の状況等の実態で判定されます。

所得区分は継続性・規模・帳簿の状況等の実態で判定されます。自己判断が難しい場合は、税務署や税理士に確認しましょう。国税庁のウェブサイト「所得の区分のあらまし」でも解説が掲載されています。

本務の年末調整とは別に確定申告が必要になるケースがありますので、年間の収入・経費を把握しておくことが大切です。

住民税の徴収方法についての注意点

確定申告では、給与・年金以外の所得に係る住民税の徴収方法を選択できます。ただし、選択した方法が必ず適用されるとは限らず、自治体によって運用が異なる場合があります。

兼職兼業は許可を得た正当な活動ですので、勤務先への見え方が気になる場合は、お住まいの自治体にも確認すると安心です。

社会保険への影響は?

本務で共済組合に加入している場合でも、兼職先の契約形態によっては追加の手続きが必要になることがあります。

雇用保険

兼職先が「雇用」形態で、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険の対象となる可能性があります。

⚠️ 重要な法改正情報
雇用保険の適用要件(週所定労働時間)は、法改正により2028年(令和10年)10月1日から「20時間以上→10時間以上」へ変更される予定です。

健康保険・厚生年金

複数の事業所で被保険者となる場合、「二以上事業所勤務届」の届出が必要になることがあります。

届出は事実発生から10日以内に届出先(選択した事業所を管轄する年金事務所等)へ提出します。届出の詳細は日本年金機構のウェブサイトで確認できます。

契約形態と所定労働時間を確認し、必要に応じて人事主管課や兼職先に確認しましょう。税金・社会保険の取り扱いについて不安がある場合は、最寄りの税務署や年金事務所、税理士・社会保険労務士への相談をおすすめします。

まとめ

教員の兼職兼業について、要点を振り返りましょう。

  • 教員の兼職兼業は「許可制」であり、法的根拠のある正当な活動(教員は教育公務員特例法17条、事務職員等は地方公務員法38条等)
  • 令和7年(2025年)12月の新ガイドラインで「本人の意思を尊重し、望まない参加を強いられないよう確認する」ことが明記された
  • 認定地域クラブ活動(国が示す要件・手続に基づき市区町村等が認定した活動)については、学校運営に支障がない限り積極的に許可される方向性
  • 主な対象は公立中学校等だが、他校種もガイドラインを参考に取組を進めることが望ましいとされている
  • 許可申請は依頼状を基に校長等へ相談し、教育委員会へ申請する流れ
  • 契約形態(雇用/業務委託等)は名称ではなく実態で判断される点に注意
  • 在校等時間を含めた就業時間の把握・調整を行い、長時間労働にならないよう管理することが重要
  • 給与以外の所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要
  • 地域クラブ活動は一般にJSC災害共済給付の対象外となるケースが多いため、運営団体の保険加入状況を確認することが重要

兼職兼業は義務ではなく、あくまで選択肢です。これまでつちかってきた指導力を活かしたい方にとって、専門性を発揮しながら適正な報酬を得られる道が開かれています。

検討の第一歩として、まずは管理職や教育委員会に相談してみてはいかがでしょうか。

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参考文献