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【第13回】高校部活動の地域展開における特殊性と対応策

📅 2026年1月13日 更新

この記事でわかること

  • 高校部活動が中学校より「後回し」とされる背景と令和8年度(2026年度)以降の見通し
  • 広域通学・専門性の高さなど高校特有の課題と現実的な対応策
  • 大学入試・就職活動における地域クラブ活動の評価と調査書の取り扱い
  • 高校教員・管理職が今から始められる3つの準備アクション

「部活動の地域展開は、うちの高校にはまだ関係ないだろう」——そう考えていませんか。

「地域展開」「地域連携」とは

令和7年(2025年)5月16日の「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」最終とりまとめで示された方針を受け、同年12月22日に公表された新ガイドラインでは、従来「地域移行」と呼ばれていた取り組みが「地域展開」という名称に変更されました。改革の理念をより的確に表すためです。単なる「移行」ではなく、学校部活動の活動を地域クラブ活動へ"展開"し、学校も地域の一部として連携しながら支えるという考え方が込められています。

ガイドラインでは、取り組みは「地域展開」と「地域連携」(部活動指導員の配置等により学校部活動をベースに地域と連携する形)に整理され、総称して「地域展開等」とされています。地域の実情に応じて、どちらの形態を取るかは自治体・学校ごとに異なります。

確かに、改革は中学校優先で進んでいます。しかし、文部科学省が策定した新ガイドライン「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、高校も内容を参考に取り組みを進めることが望ましいとされており、「Ⅳ 学校部活動の在り方」は高校の部活動も対象としています。

中学校での地域展開等が進めば、「地域クラブ活動(自治体が関与して認定する『認定地域クラブ活動』を含む、ガイドライン上の枠組みに基づく活動)」で活動してきた生徒が高校に入学してくる時代がすぐそこまで来ています。

高校には中学校とは異なる特殊な事情があります。広域通学、競技の専門性、進路への影響——これらを踏まえた対応が必要です。この記事では、高校教員・管理職が知っておくべき高校特有の課題と、今から準備できることを解説します。

なぜ高校は「後回し」なのか?改革の優先順位と今後の見通し

ガイドライン上、主な対象は「公立中学校等」とされています。このため、結果として中学校中心に制度設計・実証が進みやすい構造になっています。

背景として、以下のような課題が指摘されています(※ガイドラインに「理由」として明記されているわけではありませんが、関連する審議会資料や白書等で言及されている論点です)。

  • 教員の働き方改革:中学校教員の長時間労働は社会問題化しており、休日の部活動指導がその大きな要因となっている
  • 義務教育段階での機会確保:義務教育段階での機会均等確保が政策上の優先課題とされている
  • 地域との連携のしやすさ:中学校は通学範囲が比較的狭く、生徒の多くが同じ市区町村内に居住しているため、地域クラブ活動へのアクセスが容易

では、高校はいつ頃から本格的に影響を受けるのでしょうか。

改革実行期間の全体像

新ガイドラインでは、主な対象は公立中学校等とされていますが、高校も内容を参考に取り組むことが望ましいとされています。改革実行期間は令和8〜13年度(2026〜2031年度)の6年間で、以下のように区分されています。

改革実行期間の3段階

前期(令和8〜10年度)

休日の地域展開等を着実に進める期間

中間評価

前期終了時に改革の進捗状況等を評価

後期(令和11〜13年度)

中間評価を踏まえ、さらなる改革を推進

※注意:この前期/後期の区分は、主に公立中学校等を念頭に置いた改革実行期間の整理であり、高校の実施時期を公式に区分したものではありません。

休日と平日で異なる方針

休日と平日では、方針が異なります。

休日

改革実行期間内に原則、全ての学校部活動において地域展開の実現を目指すとされています。

※ただし、中山間地域・離島など地域展開に困難を伴う場合は、当面は部活動指導員の配置等(地域連携)を推進する、とも示されています。

平日

前期に課題への対応策の検証等を行い、中間評価の段階で今後の方針を策定するとされています。

多くの自治体で中学校中心に体制整備が進むことを考えると、高校への影響が本格化するのは後期以降になる可能性があります(※筆者見解。自治体の推進計画・実証状況により地域差が大きい点に留意が必要です)。

ただし、前述のとおり、中学校での地域展開等が進むにつれ高校入学時点で地域クラブ活動経験者が増加します。自治体の進捗によりますが、前期の進展次第では、令和10年度(2028年度)前後から地域クラブ活動経験者が増える可能性があります。高校側も、この変化に備えておく必要があります。

中学校とここが違う――高校部活動の特殊性

高校部活動には、中学校とは異なる特殊な事情が複数存在します。地域展開等を考える上で、これらの特殊性を理解しておくことが重要です。

広域通学の高校生は、どこの地域クラブ活動に参加すればいい?

高校生の通学範囲は中学生より広く、複数の市区町村にまたがることが一般的です。

地域クラブ活動は原則として「地域」に根差すため、通学先の学校周辺と自宅周辺で活動場所が異なるという問題が生じます。平日は学校近くで練習、休日は自宅近くの地域クラブ活動へという二重生活は、現実的に困難でしょう。

公共交通機関や自転車での移動が可能な高校生でも、部活動終了後に別の場所へ移動する時間を確保することは容易ではありません。特に運動部では、練習時間の確保が課題になります。

一方で、高校生は中学生に比べて自律的に移動できるため、柔軟な対応が可能な面もあることは指摘しておくべきでしょう。オンラインでの技術指導を取り入れるなど、工夫の余地はあります。

高校レベルの指導者を地域で確保できるのか?

高校部活動は中学校に比べて専門性・競技レベルが高い傾向にあります。

特に運動部では、インターハイや甲子園など全国大会を目指す活動が行われています。文化部でも吹奏楽コンクールや美術展など、高い専門性が求められる活動が多くあります。

このレベルの指導ができる人材を地域で確保することは容易ではありません。現状では顧問教員の専門性に依存しているケースが多く、地域展開との相性が必ずしも良いとは言えない構造があります。

ただし、専門性の高い外部指導者との連携事例も増えつつあります。元プロ選手や競技経験者が地域指導者として活動するケースは、今後さらに広がっていくでしょう。

強豪校・私立高校は地域展開にどう対応する?

強豪校では、部活動が学校のブランドや生徒募集に直結しています。そのため、地域展開への動機づけが生まれにくいという現実があります。

私立高校は設置者が公立とは異なるため、制度的な位置づけが異なります。私立高校の中には、部活動を学校の特色として維持する方針の学校も少なくありません。

一方で、教員の働き方改革は私立高校でも課題です。外部指導者の活用は公立・私立を問わず進んでおり、「部活動指導員」制度の導入も広がっています。

強豪校・私立高校においても、「学校部活動」と「地域との連携」のハイブリッド型が現実的な選択肢になりうるでしょう。完全な地域展開ではなく、一部の活動を外部指導者(部活動指導員や外部コーチ)に委ねる「地域連携」の形です。

進路への影響は?大学入試・就職と地域クラブ活動の評価

高校生・保護者にとって最も気になるのは、地域クラブ活動が進路にどう影響するかという点でしょう。

高校入試における取り扱い

新ガイドラインでは、高校入学者選抜(高校受験)について、以下のような方針が示されています。

高等学校入学者選抜における取扱いに差異が生じないよう十分に留意すること

(引用:文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」)

つまり、中学校での学校部活動と地域クラブ活動で、高校入試の評価に差をつけないよう配慮が求められています。

さらに、ガイドラインでは以下の点も示されています。

  • 不利取扱いの禁止:部活動に参加しなかったこと、途中で退部したこと、他の活動に移ったことのみをもって不利に取り扱うことは不適切
  • 募集要項等での明示:評価の有無・方法・観点を募集要項や学校HPで分かりやすく示すこと
  • 調査書の記載工夫:活動歴や成績だけでなく、長所・個性・意欲・能力など生徒のよさを記載する工夫が望ましい

高校教員・管理職としては、自校の募集要項における地域クラブ活動の取り扱いを明確化しておくことが重要です。

高校入試における情報共有の仕組み

なお、ガイドラインでは、地域クラブ活動の運営団体が情報共有する相手は「中学校等」であり、高校と直接やりとりをすることは想定されていません。必要な情報は中学校等を介して高校に伝わる仕組みが想定されています。

高校側としては、入学者選抜において地域クラブ活動の実績をどう評価するかを明確化した上で、中学校からの調査書等を通じて情報を得る形になります。

大学入試・就職活動はどうなる?

一方、大学入試や就職活動については、ガイドラインで明確に定められているわけではありません(ガイドラインの対象外)。

大学入試については、「調査書の内容等を多面的・総合的に評価」することが求められていますが、地域クラブ活動の扱いは各大学・選抜方式により異なります。調査書等における活動の記載方法も、大学の募集要項と高校の記載方針に左右されるため、志望先の要項を個別に確認する必要があります。

就職活動においても、企業が重視するのは「どこで活動したか」よりも「何を経験し、何を学んだか」という点は変わらないでしょう。ただし、地域クラブ活動への理解度は企業によって異なる可能性があります。

高校入試と同様の観点(学校部活動と地域クラブ活動で差をつけない)が大学入試・就職でも適用されることが望ましいですが、現時点では統一的なルールは存在しません。今後の周知・浸透が課題といえるでしょう。

教員は何を準備すべき?

高校教員としては、生徒の活動実績を適切に記録・証明できる体制を整えておくことが重要です。

高校在学中に地域クラブ活動に参加している生徒については、生徒本人からの申告と証明書類等により活動内容や成果を把握し、調査書や活動報告書に正確に記載できるよう、校内の記録体制を整備しておく必要があるでしょう。

※注意:中学校段階の入試運用とは異なり、高校と地域クラブ活動の運営団体が直接連携することは現時点では想定されていません。高校在学中の活動については、学校の内部記録として管理する形が基本となります。

高校教員が今から備えておくべき3つのアクション

高校への本格的な波及はまだ先かもしれませんが、今から準備できることがあります。以下の3つのアクションを提案します。

アクション①:中学校の動向をウォッチする

自校に入学してくる生徒の出身中学校で、地域展開等がどの程度進んでいるかを把握しましょう。

令和8年度(2026年度)以降、地域クラブ活動経験者が増えた場合の受け入れ体制を検討しておくことが大切です。そうした生徒が高校入学後にスムーズに部活動へ参加できるよう、情報収集を始めておきましょう。

アクション②:外部指導者との連携(地域連携)を試行する

いきなり地域展開を進める必要はありません。まずは「部活動指導員」「外部コーチ」の活用(地域連携)から始めてみてはいかがでしょうか。

外部指導者との連携には、役割分担の明確化、情報共有の仕組みづくり、緊急時の対応体制など、さまざまなノウハウが必要です。今のうちに小規模な連携を試行し、課題を洗い出しておくことで、将来の地域展開にも対応しやすくなります。

アクション③:校内で情報共有と議論の場を設ける

管理職・部活動担当・各部顧問で、地域展開等に関する情報共有の機会を設けましょう。

「うちには関係ない」で終わらせず、中長期的な視点で学校としての方針を議論しておくことが重要です。文部科学省やスポーツ庁の動向、近隣自治体の取り組み状況などを共有し、自校としてどのような対応が考えられるか、意見交換を始めておくことをお勧めします。

まとめ

  • 新ガイドライン(令和7年12月22日公表)では主な対象は公立中学校等だが、高校も内容を参考に取り組むことが望ましいとされており、「Ⅳ 学校部活動の在り方」は高校も対象
  • 取り組みは「地域展開」と「地域連携」に整理され、総称して「地域展開等」。地域の実情に応じて形態は異なる
  • 改革実行期間は前期(R8-10)・後期(R11-13)に区分(主に中学校等を念頭にした整理)。休日は改革実行期間内に原則、地域展開の実現を目指す(困難な地域は当面、地域連携を推進)
  • 高校特有の課題として、広域通学による地域クラブ活動へのアクセス問題、専門性の高さと指導者確保の難しさ、強豪校・私立高校の独自事情がある
  • 進路への影響について、高校入試では「取扱いに差異が生じないよう」「不利取扱いは不適切」「調査書は長所等も記載工夫」がガイドラインで示されている。大学入試・就職は各機関の方針による(ガイドライン対象外)
  • 今からできる準備として、中学校の動向把握・外部指導者との連携試行(地域連携)・校内での情報共有が有効

次回予告: 第14回では「部活動が担ってきた教育的価値を地域展開後も継続する方法」を解説します。

用語整理

本記事で使用している主な用語と、ガイドライン上の対応関係は以下のとおりです。

本記事での表現 ガイドライン上の用語・制度
地域展開 学校部活動から地域クラブ活動への展開
地域連携 部活動指導員配置等により学校部活動をベースに地域と連携
地域展開等 地域展開・地域連携の総称
地域クラブ活動 ガイドライン上の枠組みに基づく活動(認定地域クラブ活動を含む)
認定地域クラブ活動 市区町村等が認定する地域クラブ活動
部活動指導員 学校教育法施行規則に基づき配置される職(単独での引率等が可能)
外部コーチ(外部指導者) 技術指導を担う地域人材(引率等には制限あり)
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参考文献

  1. 文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月22日公表)」
  2. スポーツ庁「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議 最終とりまとめ(令和7年5月16日)」https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/039_index/attach/1420653_00001.htm
  3. スポーツ庁「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(令和4年12月)」https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop04/list/1405720_00014.htm
  4. スポーツ庁「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言について(令和4年6月)」https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/001_index/toushin/1420653_00005.htm
  5. 文化庁「文化部活動の地域移行に関する検討会議」https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/sobunsai/chiiki_ikou/index.html